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返答に窮するのは誰? トランプ的世界の裏側を描く『華氏119』

11月08日 14時57分
2018 Midwestern Films LLC 2018
民主党が下院を奪還した米中間選挙。

トランプ米大統領の表情は冴えなかったが、それでも「上院の勝利は歴史的快挙」と強気だ。

2020年の再選に意欲を示す彼と、じわじわ広がるその“トランプ的世界観”を再考するための面白い教材の一つが、公開された映画『華氏119』。

“アポなし男”マイケル・ムーア監督の新作だ。

 一昨年11月9日、トランプ大統領の誕生が決まった日から2年が経つ。

まさかと思っていた人が多かった彼の当選だが、振り返れば彼を話題の中心に据え、盛り上げてきたのはもちろんSNSだけではない。

人種差別発言を繰り返す彼の存在は「ニュース」には違いないが、報道機関が必要以上に面白がって盛り上げる結果を生んだ現実を、直視しながら追う大統領誕生の瞬間は、まるでコメディだ。

 ムーア監督の故郷、ミシガン州・フリントの鉛の汚染水問題であぶりだされるのは、機能しない行政と隠蔽工作で生まれた悲惨な被害だけでなく、”トランプ的世界”の登場と存在を結果的に支え続けている別の存在だ。

状況を変えるためにやってきたと信じたオバマ大統領が、まったく予想外の行動に出て人々を失望させた様子が、赤裸々に語られている。

ムーア監督が知事宅に向けて“汚染水”を放水する場面には溜飲が下がるが、この地域同様、貧困に苦しむ人々に、なぜトランプの言葉が響くのかがじわりと納得できる、二重の意味で恐ろしいエピソードの一つだ。

 低賃金に加え、健康保険料の倍増で苦しむ教師やバスの運転手たち。

乱射事件で命を奪われた多くの高校生。

「全米ライフル協会から寄付はもらわないと、ここで約束してください」という質問に答えられなかったのがトランプ大統領なら、誰も驚かない。

だが違う。

“無策”な政治を批判するのは簡単だが、批判する側がどれだけ本気になっているのか、ひいては有権者自身がどこまで本気で声を上げているのか、その本気度を見極めながら勝負に出る“トランプのディール”が散りばめられている。

 作品の中で、ヒトラーの台頭と重ねて語られるトランプ大統領の姿と、「歴史は、今現在の我々の立ち位置を見せてくれる」という言葉は、トランプその人を見るよりも前に、彼の“台頭”が見せてくれている世界、その世界を作り出している自分自身を直視すべきだということを教えてくれる。

ムーア監督がオバマやヒラリーなど民主党の人々にも向けた刃は、トランプが人々を「分断」したのではなく、「分断」そのものがトランプ大統領を、トランプ的世界を生んでいるのだということを浮き彫りにしている。

text by coco.g
 
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