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窪塚洋介、未来より“今”を生きることに集中

10月19日 05時12分

 映画『みをつくし料理帖』(公開中)で、松本穂香ふんする女料理人・澪を陰で支える御膳奉行・小松原(小野寺数馬)を味わい深く好演している俳優の窪塚洋介。「本読みの段階で目頭が熱くなったのは初めて」と明かすほど本作に惚れ込んだ窪塚が、充実した撮影の日々を振り返るとともに、40代を迎えた現在の心境、俳優としてのスタンスを語った。

 本作は、シリーズ累計400万部を突破した作家・高田郁(※高ははしごだか)の同名ベストセラー時代小説を角川春樹が最後の監督作として映画化した人情ドラマ。幼いころに両親を亡くした主人公・澪が、さまざまな苦難を乗り越えながら女料理人として成長していく姿を描く。澪と離ればなれになってしまう幼なじみ・野江役を奈緒が務めるほか、若村麻由美、浅野温子、薬師丸ひろ子、石坂浩二、中村獅童ら角川映画ゆかりの俳優陣が脇を固める。

松本穂香との本読みで思わず涙

 角川監督を、伝説上の人物として崇める窪塚は、初めて本人と対面した時の印象をこう語る。「いい意味でぶっ飛んだ人。迫力、存在感、緊迫感みたいなものをまといつつも、なぜかその姿に癒されるというか、不思議と安心感があるんですよね。周囲の目に臆することなく、自分が思っていることを気負わず、まっすぐに伝える生きざまにシンパシーを感じましたね」

 なにがあっても自分を貫く角川監督の姿勢に魅せられた窪塚は、原作の素晴らしさもあいまってオファーを二つ返事で快諾するが、脚本の読み合わせでさらに大きなサプライズが待っていた。「本読みで松本穂香さんと初めてお会いしたんですが、もう自分の中では澪ちゃんそのものでした。芝居もいいし、声もいい。感情が思いっきり出るシーンでは、声に言霊が宿っているというか、目頭が熱くなるくらい感動したんですよ。本読みの段階で涙が出るなんて初めての経験です」

 松本と芝居ができることに「幸せを感じた」という窪塚。彼の役どころは、その松本演じる澪を陰で支え、料理人として気付きを与える御膳奉行だ。「いわゆる将軍さまにお仕えし、食にまつわることを統括する武家ですね。だから、最初は肩肘張って重々しい雰囲気でアプローチしていたんですが、角川監督から『もっと軽くていい、ライトに、ライトに!』って言われて。僕自身が飄々としているんですが、演じているうちに、どんどん自分に近づいていく感じがしましたね」。ちょっぴり苦笑いしながら役を振り返る窪塚だが、なかなかどうして、その佇まいは、所作が美しい武家そのものだった。

一瞬一瞬を自分らしく生きていきたい

 昨年、不惑の年を迎え、俳優としてもますます円熟味を増した窪塚。Netflixオリジナルドラマ「Giri / Haji」の闇深きヤクザ役や、本作の地に足が着いた武家役など、人を惹き付ける独特の表現力は目を見張るものがある。これまでの俳優人生の中で最も影響を受けた人物として、杉田成道監督、蜷川幸雄監督、そしてマーティン・スコセッシ監督の名を挙げた窪塚は、「特に俳優としての心構えというか、精神面でものすごく学ばせていただいた」と語る一方で、そういった大きな出会いは、「自分のアンテナ次第だ」と強調する。

 「あえて3人の名前を挙げさせていただきましたが、思えば、僕を世に出してくださった『池袋ウエストゲートパーク』の堤(幸彦)監督もそうだし、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をいただき、東映の皆さんと幸せな時間を過ごさせてくださった『GO』の行定(勲)監督も然り。こうしてたどっていくと、いろんな方々から影響を受けているんですよね」と述懐する窪塚。「袖振り合うも他生の縁というか、出会った方から、つねに何かを学ぼうという気持ちでアンテナを張っていれば、もっともっと豊かになれるのかなと。今回、幸せな時間をくださった角川監督との出会いも本当に貴重なものになりましたしね」と改めて喜びをかみしめた。

 「将来のことはあまり考えない」という窪塚。あくまでもマイペースにこだわるスタンスは昔も今も変わらない。「来年どうなっているかとか、10年後にどの辺にいるかとか、考えても仕方のないこと。いま、ここにいられることに感謝して、一つ一つ、一瞬一瞬を自分らしく生きていければ、どんな展開になろうと後悔はないですからね。“今を生きる”ことに集中して続けていけば、もしかすると想像もつかないような楽しい仕事やできごとにめぐり会えるかもしれないし。『いま、この瞬間の気持ちはどうなんだ?』ということの方が未来を描くことより大事だと思いますね」。時に正直すぎて批判を浴びることもあるが、目の前にあることに全力を注ぐ窪塚の生きざまは、やっぱり窪塚の真骨頂だ。(取材・文:坂田正樹)

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