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ジョニデの名演&鉄道ディテールがたまらない!『オリエント急行殺人事件』新たな魅力

12月08日 08時03分
(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

 ミステリーの女王、アガサ・クリスティの作品の中でも傑作として名高い「オリエント急行殺人事件」。今回の映画化も話題を集めているが、1934年に発表され、現在までこの物語が多くの人を惹きつけて止まない理由は何か? 

 そのひとつが、ほとんどすべての登場人物が同等レベルで殺人の容疑者として疑われる点だろう。深夜、大雪で立ち往生した列車内で一人の乗客が殺され、他の乗客全員と車掌に対し、名探偵エルキュール・ポアロが「灰色の小さな脳細胞」をフル稼働させ、真実を引き出していく。ほぼ全キャラに見せ場があるので、これほどオールスターキャストがふさわしい作品も珍しい。今回の映画化でも、自ら監督と主人公のポアロ役を兼ねたケネス・ブラナーを中心に、原作の表現と各スターの持ち味が巧みにブレンドされ、新たに魅力的なキャラクターが創造された。物語を知っている人も、この点は心から楽しめるはずだ。

 ケネス・ブラナーのポアロは従来のイメージから少しばかり飛躍し、原作にはない冒頭シーンからステッキを使ったアクション系のテクもみせ、このあたりは現代の映画らしいエンタメ的な爽快感。そしてキャストで突出した存在感を放つのは、ジョニー・デップだ。アメリカ人の富豪で、殺害されるラチェットを演じているのだが、狡猾な表情と冷酷な口調に、女性への野獣系フェロモンも隠さず、一方で命を狙われる怯えをにじませる。殺されるほどの悪漢にどこか人間くささを加味するのは、ジョニーらしいアプローチだ。

 前代未聞のミステリー、オールスター共演というだけでなく、鉄道マニア向けのこだわりにも満ちた本作。舞台となる1930年代と同じオリエント急行を模した車両全体はもちろん、キッチンと食堂車、バーのあるサロンカーなどが美しく再現された。アールデコの調度品から、寒さで曇る窓ガラスまで、細部にも手抜かりはなく、豪華寝台列車に乗って旅をする感覚を味わえる。イスタンブール駅を出発するシーンで重要人物たちが乗り込む様子を、列車の外からカメラが横移動で追う映像から、早くも昂揚感がかき立てられる。その昂揚感は、駅の巨大セットで撮られた列車出発の瞬間、マックスに! 雪山の壁面に沿って作られた陸橋でのアクション、トンネルでのドラマなど、原作からのアップデートも効果的だ。

 では、あまりに有名な結末を知っている人に、この映画版はどうアピールするのか。過剰に劇的というより、それぞれの抑制された演技と、パトリック・ドイルのメランコリックな音楽によって、静かに心にしみわたる演出がなされ、改めて原作の強いメッセージを伝えることに成功した。復讐のためとはいえ、相手を殺していいのか。復讐をとげたとしても、愛する人は戻ってこない。そして、すべてが終わった後も人生は続く……。時を経ても色あせないテーマと、胸をかきむしる後味によって、この物語は何度でも映画化されるべきだと、今回の『オリエント急行殺人事件』は証明している。まさしくミステリー史上に残る比類なき作品だと断言したい。(斉藤博昭)

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